防犯コラム「閉店後の防犯対策」



店長の過信が窃盗被害を引き起こす!
平成17年2月に「多摩中央信用金庫」府中支店の殺人事件がありました。残業が終わって帰宅しようとした銀行職員が支店の裏口から出ようとしたところ、銀行強盗をたくらみ待ちぶせしていた窃盗犯に刺し殺されてしまったという事件です。窃盗犯はバールや軍手といった窃盗に使用する工具以外に短刀を懐に忍ばせているケースが多く、窃盗事件が殺傷事件とセットになっているのが昨今の窃盗犯罪の特徴です。このような物騒な事件やバブル崩壊以降増加し続けている外国人による犯罪が、新聞の紙面やテレビのブラウン管を通して伝えられるためか、小売店の防犯意識が高まっているのは確かです。しかしそれでは実際に小売店の店長が具体的に店舗の防犯対策をしているかと言えばそうではないようです。「何か防犯対策をしなければならないと思っていたけど、実際何をしたら良いかわからなかった」。「まさかウチが狙われるなんて思っていなかった!」。「ウチは盗まれるような多額の売上もないし、金品だって置いてないから、大丈夫だと思っていた」。これは実際に閉店後、侵入盗に入られ被害に遭った店長の言葉です。皆さんが防犯対策を怠っている一番の原因は、防犯対策の重要性に気付いていながら、「ウチに限って、そんなことは起こらない」という根拠のない過信なのです。「ウチは取る物がないから大丈夫」と安心している方もいるかもしれませんが、それは違います。昔は金銭、宝石類など金目の物が被害に遭うケースがほとんどでしたが、インターネットのオークションやリサイクルマーケットなどの換金市場が発達している昨今、換金価値のある物なら何でも盗まれてしまいます。つまり窃盗犯側は、財産の多少、店の扱っている商品の良し悪しを侵入する店の判断基準には入れていないということなのです。また店舗の作りや立地、さらには周辺環境を踏まえた個別の防犯対策を指導する組織が近くにないため、どのように防犯対策をすれば良いのかがわからないという点も、防犯対策がなされていないもう一つの大きな原因でしょう。今までこれといった防犯対策を講じなくても窃盗犯に入られずに済んでいれば、防犯対策に費用を掛けることに価値観を見出せない小売店もいらっしゃるかもしれません。しかし窃盗被害はいつもあなたの背後に迫っているのです。店がこれまでに被害に遭わなかったとしら、それは単に「運」が良かっただけのこと。被害に遭遇した店長は皆、自分の店舗が侵入被害を受けたという一報を聞いた瞬間に背筋が凍りついたと言います。また金銭だけなら取返しがつきますが、一旦窃盗被害に遭遇してしまうと、その忌まわしい記憶に悩まされたり、あらぬ風評被害にあったりと、店にとってプラスのことは何もないのです。そんな嫌な感覚を現実の体験にしないためにも、まずは、あなたのその過信が窃盗被害を引き起こすことを認識してください。それでは、どのような店が窃盗犯に狙われやすいのかを次に見ていくことにしましょう。

狙われやすい店の共通点はここにある!
多くの場合、侵入盗は事前に侵入する店舗を下調べし計画的に犯行に及びます。このような用意周到な侵入盗に狙われる店には、大きくわけて以下の四つの共通点があります。
@      入りやすい店
A      逃げやすい立地にある店
B      人目に付かない場所にある店
C      防犯装備がない店
@「入りやすい店」ですが、窃盗被害の中で最も被害件数が多いのが戸締り忘れの店です。もちろん閉店時に入口や裏口の施錠を忘れる店長はいないと思いますが、トイレのあおり扉や換気のため開けている小窓を閉め忘れている店が多いのです。このような些細な戸締り忘れをしている店は、侵入犯に「入りやすい店」として狙われる可能性が高いのです。また侵入口が人目の付きにくい場所にあり、バールなどによって簡単に破壊や取り外しができる扉や窓がある店舗も「入りやすい店」として標的にされやすいと言えます。A「逃げやすい立地にある店」というのは犯行後に犯人が逃走しやすい場所に立地している店です。窃盗犯は、その習性として犯行後すぐに身を隠せ、かつ現場から離れやすい場所を狙って侵入する場合が多いのです。たとえば電車一本でどこにでも逃げ隠れできるという理由で狙われやすいのが駅周辺にある店です。また、大通りから一本内側に入った道にある店なども狙われるやすいと言えます。B「人目に付かない場所にある店」ですが、これは人通りの少ない郊外の小売店や静かな住宅街にある店を指します。真昼間から犯行に及ぶ大胆不敵な窃盗犯もいないではありませんが、たいていの窃盗犯は夜間皆が寝静まった頃を見計らって犯行に及びます。したがって静かで人がいないという条件は、窃盗犯にとっては時間も気にせずじっくり犯行に及ぶことができる絶好の場所なのです。もしそんな場所に店を構えていて何も防犯対策をしていないとすれば、まるで窃盗犯に「盗んでくれ」と言っているに等しいと認識してください。C「防犯装備がない店」です。アルミサッシ製の扉や下かまちだけの自動ドア、面格子がない窓というのはバールを使用すれば、ものの10秒で簡単に破壊し侵入することができます。つまり窃盗犯の侵入口となりえる窓、従業員通用口、客用出入口に何らかの防犯装備がなされていない店舗が狙われやすのです。窃盗犯はチラっと店の外観を見てその店が防犯対策をしているかどうかを見極めます。窃盗犯だってバカではありませんから、いくら金がありそうでも、防犯対策がきちんとされているとわかれば敢えて危険を冒してまで犯行には及ばないでしょう。それよりは防犯対策をしていない店に侵入したほうが断然リスクは少ないし、犯人とっても安全なのです。こうして窃盗犯は防犯装備のない店を探し狙い打ちしていきます。また私が強調したいのは、一度侵入被害に遭遇した店が、なんらその後防犯対策をしなければ、二度目に入られる可能性は限りなく高いということです。それは盗む側の立場に立って考えれば当たり前のことです。窃盗犯は一度侵入して窃盗に成功しているわけですから、店内の作りも金品の在りかも全てわかっています。ただでさえリスクの少ない状況で、何も防犯装備がなければ、窃盗犯はもう小躍りして侵入するでしょう。彼らにとってこれだけ安全な犯行はないのですから! 一度窃盗被害に遭遇したことのある店は、「自店は狙われやすいタイプの店だ」と認識し、徹底した防犯対策を講じることをお勧めします。以上、狙われやすい店の共通点を見てきましたが、それではどうすれば「狙われない店」「狙われたとしても侵入されない店」にすることができるのでしょうか。次にその具体的な対策を見ていくことにしましょう。

機械警備システムは事後対策。事前の対策装備が優先!
「狙われない店」「狙われても侵入されない店」にする防犯対策の要は「外観から見える防犯対策」です。つまり、侵入盗があなたの店を見たとき、「ここは防犯対策がしっかりなされているからダメだ」と思わせる防犯装備をすることが重要です。それなら侵入したら警報ブザーが作動する機械警備システムの導入が、侵入盗を威嚇する上で手っ取り早く効果的かと言えば、そうでもありません。その理由を説明しましょう。店舗荒しや金庫盗被害の報道を見ると、驚くことに多くのケースで「警報装置が作動し、警察官が駆け付けたところ・・・・・売上金○○万円が盗まれた」と報じられています。これは小売店の多くが閉店後の侵入盗対策に警備会社による機械警備システムを導入しているにも関わらず、窃盗被害を免れることができない実態を浮き彫りにしています。たしかに店舗への侵入口のすべてを強化する機械警備システムの導入を考えるのもわかります。しかし機械警備システムは、店舗窃盗犯が店に侵入した後に作動することを考えれば、あくまで事後対策に過ぎないのです。大切なのは窃盗犯が侵入しないような、侵入対象からあなたの店を除外するような事前の対策です。以上を踏まえた上で、侵入盗が店舗に侵入する経路に応じた防犯対策を見ていきましょう。驚くほどに少ない費用で効果的な侵入盗対策ができます。ぜひ自店の防犯対策の参考にしてください

侵入盗、窃盗犯から店を守る防犯対策
@   通用口からの侵入対策
店舗の裏側や隣接する建物の狭間に設けられた従業員通用口は侵入盗にとって人目に付き難い格好の侵入経路であり、侵入盗被害の23%が従業員通用口から侵入しています。現在多くの店で使用されている通用口の扉錠は、普及品で最もピッキング被害の多いタイプであるシリンダー錠です。防犯を意識した店ではピッキング対策に強いディンプル錠に取り替えるところもありますが、ピッキングだけでなくバールで扉錠部をこじ開けて侵入するケースも多発しています。こうした現状を考慮しお勧めするのが「暗証番号錠」や「リモコン錠」の取り付けです。「暗証番号錠」は設定番号を随時変更できるので従業員が退職しても設定を変えるだけで済み、シリンダーの交換や鍵の回収といった手間や費用が削減できます。機械式で室内側からの施錠なので、バールによるこじ開け侵入も不可能なのです。また「リモコン錠」は室内側をロックするので扉外からは施錠されている場所が特定できないので完全に扉からの侵入を防御できます。
A    窓からの侵入対策
侵入盗が店舗に侵入する経路で、通用口に次いで多いのが窓からの侵入です。侵入盗の被害に遭った店舗を見ると、サッシ窓のクレセントを施錠しただけで閉店してしまう店が多いようです。しかしマイナスドライバーを窓のガラスとゴムパッキングの間に押し込み、ガラスをこじ開けるように力を加えると、ガラスはほとんど音を立てずにひび割れてしまいます。サッシ窓からの侵入犯は、この方法で割れたガラス破片を突付き落としてクレセントを開ける手口を使います。こうしたガラス破り侵入対策として防犯ガラスもありますが、1uあたり約3万と高価であることから、コスト面で半分程度の防犯フィルムを貼り付ける店が増えています。窓からの侵入対策にはガラス面にガラス破壊アラームを取り付ける方法や内締めの補助錠を追加する方法などがありますが、費用対効果という点からお勧めするのが「防犯クレセント」の装着もしくは「面格子」の付設です。防犯クレセントは、ダイヤルロック式のクレセントで、内側からダイヤルを設定しているため、外からクレセントを開けることができません。また戸外から見ても防犯用のクレセントが取り付けられていることがわかりますので、侵入盗もそんな店からは入らないでしょう。もう一つお勧めするのが、「面格子」の取付けです。面格子を付設しておけば、侵入盗が窓から侵入を試みる場合には、まず面格子を撤去するための工具の用意と面格子を撤去する時間を費やすことになります。そこまでして侵入するケースは稀です。これにより概ね窓からの侵入を抑止できます。
B    店舗入口からの侵入対策
閉店後、店の入口から堂々と侵入し犯行に及ぶ窃盗犯罪は、他の二つの侵入経路と比較すれば少ないものの、一つの侵入経路であることは確かです。現在防犯対策を意識した小売店の店舗では、入口にシャッターを取り付けていますが、これは有効な防犯対策の一つです。シャッターを開け、かつ内扉の鍵を開けて侵入するのは、侵入盗側にとってかなり大きなリスクだからです。それではシャッターのない店はどうすれば良いのでしょうか。 新規にシャッターを付設するには20万円もの費用が必要ですから、「リモコン錠」の取付けをお勧めします。これは侵入する扉の屋外からは施錠している場所が判別できないので、侵入するためには扉全体を重機で破壊する以外に侵入できない優れものです。

以上、防犯への心得と具体的な防犯対策を説明してきましたが、防犯の要となるのは、店長自身の防犯への心得です。「自分の店に限って窃盗なんてありえない」という根拠のない過信は捨て、真剣に自店の防犯に取組む心構えが大切です。また店長が「オレが店舗の財産を守るんだ!」という強い防犯意識を具体的な防犯対策により店舗外観に表してこそ、侵入盗を威嚇して寄せ付けず、店舗を守ることができるのです。ぜひ自店の防犯対策を見直し、侵入盗の標的にされない店作りに力を入れてください!