防犯コラム「学校のセキュリティ」

平成13年に大阪教育大附属池田小学校で5人の児童が刺殺された事件が記憶に強く残るが、以来児童や学校施設における凶悪犯罪事件が急速に増えている。 長崎県佐世保市立大久保小学校の小6級友による殺害事件、16年11月の奈良市立富雄北小女児誘拐殺害事件、17年2月大阪府寝屋川市立中央小学校での17歳少年による教職員3人の殺傷事件などは記憶に新しい。
池田小事件の宅間被告、奈良小事件の小林被告、寝屋川小事件の17歳少年被告、いずれの加害者も共通して心身に障害を来たした精神異常者ではないかという疑問を抱く人も多いだろう。 現に事件の刑事裁判では加害者の精神鑑定が弁護士によって請求されている。 精神異常者による犯罪が近年増え、こうした異常な人による奇異な行動や犯罪に私達は備えを求められる時代になった。 実に不安な社会である。

こうした危険で不安な社会環境の下、最も弱者である児童が集う学校の防犯対策の実態は極めて遅れている。 表現を変えれば「形だけの防犯対策」であり、「しないよりはマシ」程度のもので、犯罪被害を未然に防止する実効果は期待できない。 学校を管轄する自治体の「防犯対策に積極的に取り組んでいる」というPR活動の延長線で導入された防犯対策は、現在の犯罪情勢の下では無力と言わざるをえない。
ここ数年の間に、全国各地の自治体が児童の安全確保と防犯対策を目的に、携帯用防犯ブザーを自治体が調達して児童に配布している。 自治体担当者は児童が緊急時に防犯ブザーで不審者を威嚇撃退できると信じているのだろうか。 大人ですら不審者に急襲されれば息を呑み、身を硬直させる現場で、児童が冷静にポケットから防犯ブザーを取り出し、不審者目掛けて発報できるわけが無い。 もっと言えば、不審者から走って逃げることすら出来ずに、その場で声も出せずにウズクマルのが被害現場の実態と思うべきである。

品川区はNPO法人との協同で独自に開発した携帯子機を児童に提供し、位置認識や緊急通報を網羅するシステムを17年度から立ち上げる。 行政サイドにしては驚くほどに迅速で、思い切ったシステムを実行した希有の例である。 都内の密集した地域ならではの特徴あるシステムだが、郊外や地方の広域自治体で、このシステムを導入するにはコストの面に難がある。 大切なことは地域の特性に適合した防犯システムの導入であり、画一的な設備の横並び導入ではない。 この点で品川区は当地に適したシステムを迅速に導入した良い例であろう。

大阪寝屋川の教職員殺傷事件を受けて、驚くほどに多くの学校が警備会社と契約した警備員の派遣を導入した。 警備の専門家に委託することが問題解決の近道に違いない。 一般に小学校では児童が登下校する正門と職員や業者が出入りする裏門の2箇所があるようである。 となれば最低2人の常駐警備員が必要になり、朝8時から夕方4時までの8時間を常駐警備するために要する費用は、月額で50万円は下らない。 ひとつの自治体で50校があれば、実に月間2500万円、年間で3億円もの費用が必要になる。 3億円と児童の生命を天秤に掛けることが出来ずに、警備の専門家に委託することが問題解決の近道になるという考えだろう。

弊社ではモニタリングサービスを試行している。 防犯を必要とする施設に設置された監視カメラの映像を、弊社の監視センターに常時送信してオペレーターがモニタリングし、必要に応じて施設の開錠や発報、通報などを遠隔操作する全国初のシステムである。 施設に設置された監視カメラの映像はハードディスクに記録される。 設備の導入コストが低く、モニタリングサービスの費用は1施設に警備員を配備する費用の10分の1に満たない。

学校内における安全作りをコストとして考える必要がある。 もはや安全は「タダ」ではなくなったのである。 そのコストを警備会社から購入するのか、設備として導入するのかが判断基準になる。
重要なのは「セルフディフェンス」という考え方であり、警備会社や設備に頼り切るだけではなく、防犯意識を常に高める体制と危機意識の持ち方であり、学校内では防火訓練同様に防犯訓練が必要とされる。 これを機会に自治体は公共施設、とりわけ弱者が集う学校施設内の防犯対策を総合的に見直し、専門家の指導の下、迅速な対応を図って頂きたい。